令和6年度の定額減税により、所得税や個人住民税の減税が行われましたが、対象者の中には「減税しきれなかった方」や「制度の対象外だった方」も存在します。こうした方々を対象に、各自治体では本来給付すべき額との差額等を不足額給付金として支給しています。
確定申告では、定額減税分を所得税から完全に差し引くことができなかった場合の給付金支給については、当初から予定されていました。
しかし、具体的な給付内容や手続きについては、各自治体が7月中旬頃に詳細を公表するとしており、長い間詳細が不明な状態が続いていました。
ようやく今月に入り、各自治体のホームページで具体的な給付内容が掲載され始めています。同時に、給付の対象となる方々には、自治体から直接書面による案内が送付されているとのことです。
この記事では、定額減税による不足額給付がどのような制度なのか、そしてどのような方が対象となるのかについて、わかりやすく解説していきます。
不足額給付金とは?対象者の要件
不足額給付金とは、定額減税による減税額が本来の税額を上回り「控除しきれなかった分」や、「定額減税の対象外であった方」に対して、その差額を補填する目的で支給される給付金です。
不足額給付金は、大きく分けて次の2つのケースに該当する方が対象です。
ポイント
- 不足額給付Ⅰ(定額減税しきれなかった方)
- 不足額給付Ⅱ(定額減税の対象外だった方)
不足額給付Ⅰ(定額減税しきれなかった方)
令和6年分所得税または令和6年度個人住民税所得割において定額減税しきれない額が生じた方のうち、令和6年度に実施した調整給付の対象でなかった方や、調整給付の額を不足額が上回る方
出典:福岡市 不足額給付(定額減税しきれなかった方への給付)について
定額減税しきれなかった方は主に以下のような場合が該当します。
- 所得税や住民税の額が少なく、減税額を控除しきれなかった方
- 扶養親族の増加などにより、調整給付額が不足した方
- 所得の変動により、給付が適切に受けられなかった方
定額減税しきれない場合の具体例は以下のようなものがあります。
具体例
- 前年より所得が減少した会社員の方
前年の高い所得をもとに給付額が推計されていたため、実際の減税効果とズレが生じ、結果として不足分が発生した場合が該当します。
- 前年は無収入だったが、就職して納税者となった方
前年無収入のため給付対象外だったが、翌年収入が発生し定額減税を受けた結果、不足分が生じた場合が該当します。
- 令和6年中に扶養親族(例:子ども)が増えた方
年末時点の扶養親族数で定額減税が適用されるため、年度途中の増加分に対しては調整給付が不足する可能性があります。
不足額給付Ⅱ(定額減税の対象外だった方)
次のすべての条件を満たす方が対象です。
- 令和6年分所得税、令和6年度分住民税で定額減税がゼロ
- 扶養親族にも該当せず、定額減税の対象にならない
- 他の低所得世帯向け給付対象世帯に該当しない
他の低所得世帯向け給付対象世帯
他の低所得世帯向け給付対象世帯とは、下記の給付金の対象となった世帯を指します。
- 令和5年度非課税世帯給付金(7万円)
- 令和5年度均等割のみ課税世帯給付金(10万円)
- 令和6年度非課税世帯等給付金(10万円)
具体例として、以下のような方が該当します。
具体例
- 個人事業主の専従者(配偶者等)
税法上、扶養親族に該当せず、かつ自らも非課税で減税を受けられないため、給付の対象に。
- 同居の家族で扶養に入れない高齢者
年金収入等で所得超過により扶養親族の要件を満たさず、かつ所得税・住民税非課税で定額減税対象外となっているケース(個人住民税所得割課税者が同世帯にいるため、低所得世帯向け給付の対象外)
支給額の目安

不足額給付Ⅰ
「令和6年分所得税および定額減税の実績額等が確定した後の本来給付すべき額」と「令和6年度に実施した調整給付額」との差額を給付します。
給付額算出方法
不足額給付額 = 本来給付すべき額(所得税分①+住民税分②)- 令和6年度調整給付額
※本来給付すべき額は1万円単位で切り上げて算出
- 「所得税分」の算出方法
定額減税可能額:3万円×(本人+扶養親族数) - 令和6年分所得税額(定額減税前) = ①所得税分 (①<0の場合は0)
*注意:令和6年分所得税の扶養親族等の数は、令和6年12月31日時点の扶養状況で判断します。ただし、令和6年中における扶養親族等の死亡については、死亡の時の扶養状況で判断します。 - 「住民税分」の算出方法
定額減税可能額:1万円×(本人+扶養親族数) - 令和6年度個人住民税所得割額(定額減税前) = ②住民税分 (②<0の場合は0)
*注意:令和6年度個人住民税の扶養親族等の数は、令和5年12月31日時点の扶養状況で判断します。なお、控除対象配偶者を除く同一生計配偶者(合計所得1000万円超かつ配偶者の合計所得が48万円以下の場合)については、令和7年度個人住民税所得割額から定額減税されます。
不足額給付Ⅱ
不足額給付Ⅱについては、定額で支給されます。
原則4万円(定額)
※令和6年1月1日時点で国外居住者であった場合には3万円
申請・手続きについて

申請手続きについては、各自治体で行う必要があります。
例えば、福岡市での申請方法は対象者の状況に応じて3つに分かれます。
出典:福岡市 不足額給付(定額減税しきれなかった方への給付)について
原則手続き不要な方
以下に該当する方は、原則手続きが不要です。
- 福岡市からすでに調整給付を受けた方
- 公金受取口座を登録済みの方
この場合、福岡市から「支給のお知らせ」が届き、指定口座へ自動で給付されます。
確認書による手続きが必要な方
支給対象のうち、調整給付を受けておらず、公金受取口座も未登録の方については、 「不足額給付支給確認書」が福岡市から郵送され、必要事項を記入のうえ、令和7年10月31日までに郵送またはオンラインで申請が必要です。
自ら申請による手続きが必要な方
支給対象者のうち、以下に該当する方は、お知らせや「不足額給付支給確認書」が届かない場合、令和7年10月31日までに郵送またはオンラインで申請が必要です。
- 令和6年1月2日以降に福岡市へ転入した方
- 市外にお住まいの個人事業主専従者の方
最後に
令和6年度の定額減税により多くの方が減税の恩恵を受けましたが、減税額が税額を上回って控除しきれなかった方や、制度の対象外だった方も存在します。
これらの方々を対象に、各自治体では本来給付すべき額との差額等を不足額給付金として支給しています。
対象者は、①減税しきれなかった方(不足額給付Ⅰ)と、②減税対象外だった方(不足額給付Ⅱ)の2パターンに分かれており、具体的な条件や金額、申請方法は自治体ごとに異なります。
多くの自治体では、対象者には案内が届き、自動支給・確認書の返送・申請書提出など、状況に応じた手続きが求められます。
自身が対象かどうか確認のうえ、期限内に必要な手続きをお忘れのないようご注意ください。