
電子申告は、マイナンバーカードを活用する方法やID・パスワード方式など、複数の手続き方法が用意されており、一見すると複雑に感じられるかもしれません。
しかし、実際にはそれぞれの方法に明確なメリットや特徴があり、利用環境に合わせて最適な手法を選ぶことが可能です。
本記事では、これらの電子申告の手続き方法を分かりやすく整理し、具体的な手順や必要な準備、さらには送信後のフォローアップまで、全体の流れを解説しています。
自宅やオフィスからのe-Taxによる申告

e-Tax(国税電子申告・納税システム)は、インターネットを通じて確定申告や納税手続きが完結できるシステムです。利用者登録を済ませれば、スマートフォンやパソコンから24時間いつでも手続きを行えます。さらに、申告後は受付確認通知が電子的に発行され、申告の進捗状況がリアルタイムで確認できるため、安心して手続きが進められます。
e-Taxの主なメリット
e-Taxの主なメリットとしては以下の5つが挙げられます。
- 自宅からいつでも申請可能: 出勤や外出の必要がなく、24時間利用できる。
- 入力内容の確認・修正が容易: 申告内容をデータで保存・確認できるので、入力ミスや記入漏れの早期発見・修正が可能。
- 添付書類の提出不要: 各種控除証明書などはオンラインで自動入力・連携されるため、書類を別途送付する必要がない。ただし、連携状況の確認や不足データの手入力が必要な場合もあります。
- 早期還付の可能性: 通常、還付金は約3週間程度で振込手続きが完了します(書面提出の場合は1か月~1か月半)。
- 受付確認通知の発行: 送信後、受付番号や受信日時が記載された通知が発行され、電子保存が可能です。
e-Tax送信に必要なものと事前準備
e-Taxで電子申告する場合は、事前に準備が必要です。
- 使用する端末の確認
- スマートフォンの場合:
- マイナンバーカード読み取りに対応している機種であること。
- 事前にマイナポータルアプリ(またはe-Tax専用アプリ)がインストールされ、BluetoothやNFCなどの設定が有効であるか確認してください。
- パソコンの場合:
- マイナンバーカードおよびカード読み取り対応のスマートフォンやICカードリーダライタが必要です。
- ご利用のパソコンのOSやブラウザがe-Taxソフトに対応しているか、最新の状態に更新されているか確認してください。
- スマートフォンの場合:
- 必要な証明書とパスワード
- マイナンバーカード
- マイナンバーカード発行時に設定した2種類のパスワード
- 利用者証明用電子証明書(数字4桁)および署名用電子証明書(英数字6~16文字)
- ※電子証明書の有効期限や更新手続きについても、事前に確認し、期限切れにならないよう管理する必要があります。
e-Tax送信方法の詳細
e-Taxでの送信方法は、マイナンバーカードを利用する方法とIDとパスワードを使用する方法の2パターンがあります。

マイナンバーカードを利用する方法
マイナンバーカードを利用する場合、マイナポータル連携機能により、給与所得の源泉徴収票や各種控除証明書のデータが自動取得されます。これにより、申告書の入力作業が大幅に簡略化されます。
- 利用者登録: 事前にe-Taxサイトでの利用者登録が必要です。登録時には、氏名・住所・生年月日などの情報が正確に登録されているか確認してください。
- データ連携の確認: 登録後、金融機関や事業所からのデータ連携が正しく行われているか、マイポータル上で確認し、不足があれば手入力で補完してください。
IDとパスワードを利用する方法
マイナンバーカードを持っていない場合は、税務署から発行される「ID・パスワード方式の届出完了通知」を利用して申告が可能です。
- 届出完了通知の管理: この通知は、税務署での窓口申請または郵送により受け取ります。情報漏洩や紛失を防ぐため、厳重に管理してください。
- 暫定措置の留意点: この方法はマイナンバーカード普及前の暫定措置ですので、将来的にはマイナンバーカードへの移行を検討することが望ましいです。
申告手続きの流れと注意事項

事前準備
- 必要書類(源泉徴収票、各種控除証明書、マイナンバーカードなど)をあらかじめ揃え、各書類のデータ連携が正しく行われているかチェックしてください。
- 使用端末の環境(OS、ブラウザ、アプリ等)が最新状態であることを確認し、万一のトラブルに備えて予備の接続手段(別のパソコンやスマートフォン)の準備も推奨します。
利用者登録とログインテスト
- e-Taxサイト上で利用者登録を行い、必要な証明書の発行や設定を済ませます。
- 登録後、テストログインや申告データのプレビュー機能を活用し、正常に操作できるか確認してください。
申告書の作成と入力確認
- e-Taxソフトの画面指示に従い、必要事項を入力します。自動連携されたデータと手入力の内容の整合性を十分に確認し、入力ミスがないかチェックします。
- 保存機能を活用し、途中で中断した場合でも再開できるようにしてください。
送信と受付確認
- すべての入力内容に問題がなければ、電子署名を付与して申告書を送信します。
- 送信後、画面に表示される受付確認通知(受付番号や送信日時)を必ず保存または印刷し、控えとして保管してください。
- 万一、送信エラーが発生した場合は、表示されるエラーメッセージの内容に沿って再送信の手順を踏むか、最寄りの税務署へ問い合わせるようにしましょう。
申告後のフォローアップ
- 送信後に不備や誤りが発覚した場合、受付期間内であれば訂正申告が可能です。
- 還付金の振込状況や申告内容の確認は、e-Taxサイト上で随時チェックできます。
スマートフォンで申告する場合
スマートフォンの申告では事前にマイナポータル(またはe-Tax専用)アプリをインストール・設定し、PCのQRコードをスマホで読み取ることで認証と送信が円滑に行われます。
- アプリの準備と設定
- マイナポータルアプリ(またはe-Tax専用アプリ)が必須です。事前にアプリをインストールし、初回設定やカード読み取りのテストを済ませておきましょう。
- QRコードによる認証
- パソコンでの申告時、スマートフォンに表示されるQRコードを読み取ることで、認証や送信手続きがスムーズに進む仕組みが整っています。
郵送または窓口での申告

従来の方法として、必要な書類をプリントアウトし、所轄税務署へ郵送または直接窓口に提出する方法もあります。
用紙の入手方法
令和5年4月以降、税務署への郵送用紙の自動送付は行われなくなっているため、国税庁のホームページから最新の申告書等様式をダウンロードし、プリントアウトしてご利用ください。
提出時の管理と注意点
- 書面で申告する場合、受付時に収受日付印が押されなくなったため、申告書の送付日や受付状況はご自身で記録・管理する必要があります。
- 直接窓口に提出する場合は、受付時間や必要な本人確認書類について、事前に管轄税務署へ問い合わせることをお勧めします。
申告の受付期間と相談について

令和6年分の確定申告の受付期間は、2025年2月17日(月)から3月17日(月)までとなります。
- 受付期間内の注意点
申告内容に不備や誤記載があった場合、受付期間内であれば訂正申告が可能です。できるだけ早めに内容を確認・送信し、余裕を持った対応を心がけてください。
- サポート体制と相談窓口
ご不明な点や手続きに関するご相談がある場合は、最寄りの税務署にお問い合わせください。税務署では専用のヘルプデスクが設置され、オンラインや電話でのサポートを実施しています。
まとめ
電子申告(e-Tax)を利用すると、自宅やオフィスから24時間いつでも確定申告が可能となり、申告書の作成やデータ連携、入力内容の確認などが自動化されるため、ミスの防止や作業効率の向上が期待できます。
マイナンバーカードを活用すれば、源泉徴収票や各種控除証明書のデータが一括取得でき、入力の手間が大幅に軽減されるとともに、還付金の振込も早期に行われるメリットがあります。送信後には受付確認通知が発行され、受付内容の電子保存ができるため、後からの照会も容易です。
一方、従来の書面での申告は、国税庁のホームページから用紙をダウンロードし、税務署へ郵送または窓口で提出する方法となり、受付印の管理など自己責任での記録保持が必要です。
どちらの方法を選択するにしても、事前に必要書類や証明書、使用する端末の環境を十分に確認し、利用者登録やテスト運用を実施することが重要です。
本記事の内容は、投稿時点での税法、会計基準会社法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
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