年末調整は、1年間の税額を正しく精算するための大切な手続きです。令和6年分からは、新たに定額減税が導入されるほか、一部の申告書が簡略化されるなど、手続きがより効率的になります。本記事では、年末調整の基本や変更点を分かりやすく解説し、スムーズな対応に役立つ情報をお届けします。
令和6年分年末調整変更点の概要
令和6年分の年末調整の変更点としては、主なものが以下のとおり3つあります。
- 定額減税の導入
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」が簡略化
- 「給与所得者の保険料控除申告書」が簡略化
定額減税が導入される点が最も大きな変更点ですが、それに伴い申告書の様式に変更が見られます。
申告書の統合と新設
2024年(令和6年)分の年末調整から、「基礎控除申告書」の様式が変更され、年調減税のための申告書を兼ねる形になりました。
具体的には、「令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という名称になっています。
新たな記入項目の追加
定額減税に関連して、「本人定額減税対象」と「配偶者定額減税対象」のチェックボックスが新設されました。これにより、従業員は各種の定額減税を受ける場合、これらの欄で申告する必要があります。
一部簡略化の動き
一方で、簡略化の動きも見られます。
- 「保険料控除申告書」の様式が一部簡略化され、各種保険料控除の欄から「あなたとの続柄」が削除されました。
- 「簡易な扶養控除等申告」が創設され、前年と記載事項に変更がない場合、簡易な申告書を選択できるようになりました。
変更点①定額減税の導入
令和6年度の年末調整で最も注目すべき変更点は、定額減税の導入です。
この制度では、納税者および要件を満たす配偶者や扶養親族1人につき、所得税3万円、住民税1万円が控除されます。
定額減税の年末調整での記入方法は以下のとおりです。
ポイント
- 納税者本人の合計所得金額が1,805万円以下の場合に適用されます。
- 「給与所得者の基礎控除申告書」に「本人定額減税対象」欄が追加され、該当する場合にチェックを入れます。
- 配偶者についても、本人の合計所得金額が1,805万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円以下の場合、「配偶者定額減税対象」欄にチェックを入れます
変更点②「給与所得者の扶養控除等申告書」が簡略化
令和6年度から、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出方法が簡素化されます。
簡素化される内容は以下のとおりです。
ポイント
- 前年に提出した内容から変更がない場合、「前年から異動なし」という旨の記載のみで提出可能になります。
- この簡略化された申告書は「簡易な申告書」と呼ばれます。
- 簡易な申告書には、本人の氏名、住所、マイナンバー、および変更がない旨を記載します。
注意点:簡易な申告書は、本人や扶養親族に異動がある場合は使用できません。
異動の具体例としては、以下のようなものがあります。
- ①配偶者や親族の扶養状況の変更
- ・結婚して配偶者が新たに扶養に入る場合
・子どもが生まれて扶養に加える場合
・子どもが就職して扶養から外れる場合
・親の介護を始めて扶養に加える場合
- ②扶養親族の年齢変動による控除額の変更
- ・子どもが16歳になり、扶養控除の対象となる場合
・子どもが19歳になり、特定扶養親族から一般扶養親族に変わる場合
・扶養している親が70歳になり、老人扶養親族となる場合
- ③本人の状況変更
- ・離婚してひとり親になった場合
・配偶者との死別により寡婦となった場合
・事故や病気により障害者となった場合
・再婚によりひとり親や寡婦でなくなった場合
・障害の回復により障害者でなくなった場合
これらの状況変更がある場合、詳細な申告が必要となるため、簡易な申告書は使用できません。
変更点③「給与所得者の保険料控除申告書」が簡略化
「給与所得者の保険料控除申告書」の様式が変更され、記載内容が簡素化されます。
主な変更点は以下のとおりです。
ポイント
- 「生命保険料控除」欄から「保険金等受取人」との続柄の記載が不要になります。
- 「地震保険料控除」欄から保険料等の対象となる家屋等に居住する人と申告者との続柄の記載が不要になります。
- 「社会保険料控除」欄から申告者が配偶者や親族の負担すべき社会保険料を支払った際の続柄の記載が不要になります。
まとめ
令和6年分の年末調整では、以下の3つの変更が大きなポイントです。
- 定額減税の導入
- 納税者本人および配偶者や扶養親族1人につき、所得税3万円、住民税1万円が控除されます。
- 所得要件を満たす場合に適用され、申告書に新たな記載欄が追加されました。
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」の簡略化
- 前年と内容が変わらない場合、「変更なし」の記載のみで提出可能になり、手続きが簡単に。
- 「給与所得者の保険料控除申告書」の簡略化
- 保険料控除の対象に関する続柄の記載が不要になるなど、記入項目が簡素化されました。
今年は、例年にはない定額減税の処理が増えるため、処理が煩雑となることが予想されます。該当する内容や書類の準備については、早めに進めておくことをおすすめします。
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