来月8月は個人事業税の第1期の納付月になります。
個人事業税は、個人事業を営む方が前年の事業による所得に対し、第1期(8月)第2期(11月)の2回で納付する税金です。
個人で事業を営んでいても、個人事業税についてはあまり馴染みがないかもしれません。
じつは、所得税の確定申告や住民税の申告をした方は個人の事業税の申告をする必要はなく、確定申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入することで代用されます。
また、個人事業税には、事業主控除として年間290万円の控除があるため、所得税は課税されても個人事業税は課税されないこともあります。
あまり馴染みがない個人事業税ですが、個人事業主にとっては必ず関わってくる税金ですので、最後までご一読ください。
個人事業税の概要
個人事業税は、地方税法等で定められた事業(法定業種)を営む個人に対して課されます。現在、法定業種は70種類に及び、ほとんどの事業が対象となります(地方税法72条の2第3項、第8項、第9項、第10項、地方税法施行令第10条の3、第12条、第14条)。
納める人
個人事業税を納める対象となるのは、事務所や事業所を設け、法定業種の事業を行っている個人の方です。
申告の期限・方法
個人事業を営む方は、毎年3月15日までに前年中の事業の所得などを都道府県に申告する必要があります。ただし、所得税の確定申告や住民税の申告を行い、各申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入すると、個人の事業税の申告は不要です。
また、年の中途で事業を廃止した場合は、廃止の日から1か月以内(死亡による廃止の場合は4か月以内)に個人事業税の申告を行う必要があります(地方税法第72条の55、第72条の55の2)。
納める時期と方法
個人事業税は原則として年2回(8月と11月)に分けて納めます。
納付には窓口のほか、口座振替、コンビニエンスストア、クレジットカード納付、スマートフォン決済アプリ、金融機関のペイジー対応のATMなどが利用できます。
納付については、各決済方法の導入状況など、くわしくは各自治体に確認することをお勧めします。
事業税の計算と税率
個人事業税では、事業による所得を求め、業種ごとの税率を適用し、税額を計算します。
事業税の計算方法
前年の1月1日から12月31日までの1年間の事業から生じた事業所得又は(及び)不動産所得で、事業の総収入金額から必要経費、各種控除額を控除して計算します。
個人事業税の基本的な計算式は以下の通りです。
ポイント
個人事業税 = {所得(収入 - 必要経費) - 各種控除 - 事業主控除290万円} × 税率
法定業種と税率
個人事業税の税率は事業の種類により異なります。代表的な業種と税率は以下のとおりです。
区分 | 税率 | 事業の種類 | |||
第1種事業(37業種) | 5% | 物品販売業 | 運送取扱業 | 料理店業 | 遊覧所業 |
保険業 | 船舶定係場業 | 飲食店業 | 商品取引業 | ||
金銭貸付業 | 倉庫業 | 周旋業 | 不動産売買業 | ||
物品貸付業 | 駐車場業 | 代理業 | 広告業 | ||
不動産貸付業 | 請負業 | 仲立業 | 興信所業 | ||
製造業 | 印刷業 | 問屋業 | 案内業 | ||
電気供給業 | 出版業 | 両替業 | 冠婚葬祭業 | ||
土石採取業 | 写真業 | 公衆浴場業(むし風呂等) | - | ||
電気通信事業 | 席貸業 | 演劇興行業 | - | ||
運送業 | 旅館業 | 遊技場業 | - | ||
第2種事業(3業種) | 4% | 畜産業 | 水産業 | 薪炭製造業 | - |
第3種事業(30業種) | 5% | 医業 | 公証人業 | 設計監督者業 | 公衆浴場業(銭湯) |
歯科医業 | 弁理士業 | 不動産鑑定業 | 歯科衛生士業 | ||
薬剤師業 | 税理士業 | デザイン業 | 歯科技工士業 | ||
獣医業 | 公認会計士業 | 諸芸師匠業 | 測量士業 | ||
弁護士業 | 計理士業 | 理容業 | 土地家屋調査士業 | ||
司法書士業 | 社会保険労務士業 | 美容業 | 海事代理士業 | ||
行政書士業 | コンサルタント業 | クリーニング業 | 印刷製版業 | ||
3% | あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業 | 装蹄師 |
各種控除と注意点
個人事業税の所得を求める計算過程は、所得税と同じように収入から必要経費を差し引く点で同じですが控除については相違があります。
所得税の青色申告特別控除との関係
所得税では、事業所得や不動産所得には、申請により要件を満たせば青色申告特別控除の適用がありますが、個人事業税では青色申告特別控除は適用されません。
そのため、所得税法上の事業所得や不動産所得に青色申告特別控除額の分所得に加算されます。
個人の事業税の事業専従者給与(控除)額
事業主と生計を一にする親族が専らその事業に従事する場合、一定額を必要経費として控除できます。
ポイント
- 青色申告の場合:その給与支払額
- 白色申告の場合:配偶者86万円、その他の方50万円が限度
繰越控除
越控除を受けるには、所得税、住民税、事業税のいずれかの申告を毎年一定の期限内に行う必要があります。
- 損失の繰越控除
- 対象者: 青色申告者
内容: 事業の所得が赤字(損失)となった場合、その損失を翌年以降3年間繰り越して控除できます。
- 被災事業用資産の損失の繰越控除
- 対象者: 白色申告者
内容: 震災、風水害、火災などで事業用資産に損失が生じた場合、その損失を翌年以降3年間繰り越して控除できます。
- 譲渡損失の控除と繰越控除
- 対象資産: 事業用資産(機械、装置、車両等。ただし、土地、家屋等を除く)
内容: 資産の譲渡によって生じた損失は、事業所得の計算上控除できます。青色申告者は、その損失を翌年以降3年間繰り越して控除できます。
事業主控除
事業主控除として、年間290万円が控除できます。なお、営業期間が1年未満の場合は月割額となります。
まとめ
個人事業税は、多くの個人事業主にとって避けては通れない税金です。法定業種に該当するかどうか、税率や税額の計算方法、申告と納付の期限などを正しく理解し、適切に対応することが重要です。
本記事の内容は、投稿時点での税法、会計基準会社法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
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