7月の主な税務として、所得税の予定納税第1期の納付があります。
所得税の予定納税というのは、
簡単に言うと、今年の所得税を前年の所得や税額による基準額をもとに予め前払いしておくような制度です。
予定納税には基準があるので、これまで対象にならなかったのに、前年の所得が上がって、いきなり「予定納税」の通知が来てびっくりしている方もいらっしゃると思います。
この予定納税、「予定納税」という言葉が予め納付しておくという意味合いから、「余裕があるなら納める」といったイメージをもって軽く考えがちですが、じつは、納付が遅れた場合には罰則もあります。
一般的に税金は確定した時点で納付することから、予定納税については、あまり理解がなされず、
- 予め納付する仕組みが理解しづらい
- 払いすぎもあるのでは?
- 払えない時はどうするの?
といった疑問もあると思います。
そこで、この記事では、予定納税の仕組みを図解で示しつつ、払い過ぎにならないのか?払えない時の手続き方法などを解説しました。
予定納税の仕組み
予定納税とは、簡単に言うと、今年の所得税を前年の所得や税額による基準額をもとに予め前払いしておくような制度です。
具体的には、前年分の所得や税額をもとにした金額「予定納税基準額」が15万円を超えると、予定納税基準額の3分の1の金額を、第1期分・第2期分とし2回納付する仕組みになっています。
予定納税基準額
予定納税の元になる金額を「予定納税基準額」といいますが、事業所得、不動産所得、給与所得のみの場合は、申告書の「申告納税額」が予定納税基準額になります。
山林所得、退職所得等の分離課税の所得(分離課税の上場株式等の配当所得等を除きます。)および譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得の金額がある場合には、予定納税基準額は以下のようになります。
予定納税基準額の計算 | ||
➀ | 前年分の課税総所得金額及び分離課税の上場株式等に係る 課税配当所得等の金額に係る所得税額 | - 源泉徴収税額 |
② | ➀×2.1% | |
③ | ➀+②=予定納税基準額 |
(注1)平均課税を受けた臨時所得の金額がある場合には、なかったものとして計算します。
確定申告時に精算
予定納税で納付した所得税は確定申告で精算されます。確定申告では年間の所得を計算し、一旦申告納税額を算定します。
そこから予定納税分を差し引いて、納付税額を算定する仕組みになっています。
そのため、予定納税の方が多ければ還付になります。
予定納税の手続き
予定納税の手続きは、原則、申告書などを提出するのではなく、納付期限までに予定納税額を納付するだけです。
ただ、所得税の見積額が予定納税基準額よりも少なくなる人は、
所轄の税務署長に「予定納税額の減額申請書」を提出して承認されれば、予定納税額は減額されます。予定納税の減額申請については後述します。
納付について
予定納税は第1期、第2期とあります。それぞれの納付期限は、納付の方法が納付書による納付か、振替納税かによって期限が違ってきます。納付期限や納付しなかった場合の罰則は以下のようになります。
納付の期限
振替納税していない場合
7月1日から7月31日までに、第2期分として11月1日から11月30日までに納めることになっています。
振替納税の場合
第1期7月31日、第2期は11月30日
納付が遅れた場合
予定納税にも納付期限があります。納付期限があるので、確定申告の税金と同様、納付が遅れると延滞税が課されます。
令和5年の延滞税の割合は、
➀納期限の翌日から2か月を経過する日までは、年2.4%の割合 |
②納期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以後については、年8.7%の割合 |
となっています。
納付が困難な場合の手続き
納付が困難な場合には、予定納税額の減額申請をすることができます。対象となる場合、減額申請の方法は以下のとおりです。
対象となる場合
予定納税額の減額申請は、例えば、以下のような場合が対象となります。
➀廃業や休業、失業をした場合 |
②業績不振など本年分の所得が前年より明らかに少ないことが見込まれる場合 |
③災害や盗難など事業用資産などに損害を受けた場合 |
➃所得控除や税額控除が前年より増加する場合 |
(注)➃所得控除や税額控除が増加する場合とは以下のような場合です。
- 災害盗難などで住宅、家財に損害があり雑損控除を受けられる場合
- 多額の医療費支出で医療費控除を受けられる場合
- 配偶者控除や扶養控除などの控除を受けられる人が増加した場合
- 社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除が増加する場合
- 寄付金控除や住宅借入金等特別控除が受けられる場合
減額申請の方法
減額申請の方法は「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を提出します。7月の減額申請は、当年6月30日の現況により申告納税見積額を計算し7月15日までに申請書を提出します。
11月の減額申請は、当年10月31日の現況により申告納税見積額を計算し11月15日までに申請書を提出します。
まとめ
予定納税は、あまり認識がなかったり「予定」、「予め納付する」という名称から納付が遅れてもペナルティは受けない印象がありますが、納付期限も罰則もあります。
個人事業の場合など、その年度によっては事業の状況から納付が難しくなることもありますが、その際は放置せず、減額申請の手続きをすることをお勧めします。
本記事の内容は、投稿時点での税法、会計基準会社法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
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