
2025年3月分(4月納付分)から、全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率が改定されました。
この改定は、各都道府県ごとに異なる保険料率が反映されるため、給与計算や社会保険料の計算に影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、今回の改定内容と、それに伴う実務上の注意点について解説いたします。給与計算や社会保険料の計算を行うための参考情報としてご活用ください。
協会けんぽ健康保険料率の改定

協会けんぽ(全国健康保険協会)の健康保険料率は、全国一律ではなく、都道府県ごとに毎年見直される仕組みとなっています。
保険料率の改定は、医療費の動向や地域ごとの加入者数、年齢構成などを反映し、保険財政の健全化を図るために行われます。2025年度もこの見直しが行われ、3月分(4月納付分)から新しい保険料率が適用されています。
毎年見直される仕組みについて
協会けんぽの健康保険料率は、各都道府県支部ごとに設定されており、毎年3月分(4月納付分)から改定されます。
これは、都道府県ごとの医療費水準や加入者の年齢構成、健康づくりの取り組み状況などをもとに算出されているためです。たとえば、医療費が増加傾向にある地域では保険料率が上がることがあり、逆に医療費の伸びが抑えられた地域では保険料率が下がる場合もあります。
保険料の計算方法(標準報酬月額 × 保険料率)
健康保険料は、被保険者(従業員)の「標準報酬月額」に、その都道府県の健康保険料率を掛けて算出します。
標準報酬月額とは、原則として4月から6月の給与の平均額をもとに決定される等級区分です。計算式は以下の通りです。
ポイント
健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率
実際に従業員が負担する金額は、この保険料を会社と従業員で折半した額となります。たとえば、東京都で標準報酬月額が30万円、保険料率が9.98%の場合、
30万円 × 9.98% ÷ 2 = 14,970円(従業員負担分)となります。
なお、保険料率は都道府県ごとに異なるため、事業所の所在地に応じた料率を確認する必要があります
介護保険料率(40~64歳対象)の加算について
40歳から64歳までの方(第2号被保険者)は、健康保険料に加えて「介護保険料」も納める必要があります。
介護保険料は、健康保険料と同様に標準報酬月額に介護保険料率を掛けて算出され、健康保険料と一緒に給与から天引きされます。
たとえば、2025年度の協会けんぽの介護保険料率は1.59%です8。したがって、40歳以上64歳未満の従業員の場合、
健康保険料率+介護保険料率=合計保険料率
となり、この合計保険料率を標準報酬月額に掛けて保険料を計算します。
介護保険料の徴収は40歳の誕生月から始まり、65歳になると健康保険料から切り離されて個別に納付する仕組みとなります。
このように、協会けんぽの健康保険料率は毎年見直され、地域や年齢によって負担額が変わるため、最新の料率を必ず確認し、給与計算等の実務に反映させることが重要です。
2025年度(令和7年度)保険料率の主な変更点
2025年度(令和7年度)の協会けんぽ健康保険料率は、都道府県ごとの医療費水準や年齢構成の変化などを反映し、3月分(4月納付分)から大きく見直されました。全国平均の保険料率は10.00%で据え置かれましたが、都道府県ごとに引き上げ・引き下げの動きが見られます。

保険料率が上がった都道府県
2025年度は、全国47都道府県のうち28道県で保険料率が引き上げられました。特に、北海道、青森県、秋田県などでは医療費の増加や高齢化の進展が影響し、保険料率が上昇しています。
- 北海道:10.21% → 10.31%(+0.10ポイント)
- 青森県:9.49% → 9.85%(+0.36ポイント)
- 秋田県:9.85% → 10.01%(+0.16ポイント)
- 宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、三重県、滋賀県、和歌山県、岡山県、徳島県、佐賀県、長崎県、宮崎県、鹿児島県なども引き上げ対象です。
特に佐賀県は10.42%から10.78%へと大幅に上昇し、全国で最も高い保険料率となりました。
保険料率が下がった都道府県
一方、18都府県では保険料率が引き下げられています。東京都、神奈川県、大阪府、沖縄県などの大都市圏を中心に、前年より料率が低くなりました。
- 東京都:9.98% → 9.91%(-0.07ポイント)
- 神奈川県:10.02% → 9.92%(-0.10ポイント)
- 大阪府:10.34% → 10.24%(-0.10ポイント)
- 沖縄県:9.52% → 9.44%(-0.08ポイント)
その他、京都府、兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県、熊本県なども引き下げとなっています。
沖縄県は全国で最も低い保険料率となりました
保険料率が変わらなかった都道府県
大分県のみ、2024年度と同じ10.25%で据え置きとなりました。47都道府県のうち、変更がなかったのは大分県だけです。
全国平均・最高・最低
- 全国平均保険料率は10.00%で、前年度と変わりません。
- 最高は佐賀県の10.78%、最低は沖縄県の9.44%となり、都道府県間の格差は1.34ポイントに拡大しました。
このように、2025年度は多くの都道府県で保険料率が見直され、地域ごとに負担額が変動しています。給与計算や社会保険料控除の際は、最新の料率を必ずご確認ください。
実務上の注意点

2025年4月納付分からの協会けんぽの保険料率の改定について、適用時期や実務対応のポイントをまとめました。
保険料率変更は2025年3月分(4月納付分)から
2025年度の協会けんぽ健康保険料率および介護保険料率の改定は、2025年3月分(4月納付分)から適用されます。
このタイミングで給与計算に反映されていないと、従業員の手取りや会社・従業員双方の負担額に誤りが生じるため、必ず適用時期を確認しましょう。なお、任意継続被保険者や日雇特例被保険者は4月分(4月納付分)から新料率が適用されます。
給与計算ソフトの更新を忘れずに
保険料率の改定に合わせて、給与計算ソフトやシステムの保険料率設定を必ず最新のものに更新してください。
更新漏れがあると、誤った保険料を計算・控除してしまい、従業員の手取り額や会社負担額に影響を与えるだけでなく、事後修正の手間や従業員からの信頼低下につながる可能性があります。改定前後で料率が異なるため、適用月の切り替え設定にも注意しましょう。
社会保険料控除タイミング(当月控除・翌月控除)の確認
社会保険料の控除タイミングは、会社ごとに「当月控除」か「翌月控除」かで異なります。
原則として、当月分の社会保険料は翌月支給の給与から控除するケースが多いですが、給与締日や支払日によっては当月控除となる場合もあります。控除のタイミングを誤ると、保険料率の切り替え時に計算ミスが起こりやすいため、会社の運用ルールを再確認し、従業員への案内も徹底しましょう。
介護保険料率(1.59%)の反映も忘れずに
2025年度の介護保険料率は1.59%に引き下げられています。
40歳から64歳の従業員が対象となるため、健康保険料率と合わせて介護保険料率も必ず最新の数値に更新してください。介護保険料率の変更も給与計算ソフトに反映し忘れがないよう、ダブルチェックが重要です。
これらの実務対応を確実に行うことで、従業員への影響や事務負担の増加を防ぐことができます。年度替わりの時期は特に注意し、最新の保険料率をもとに正確な給与計算を心がけましょう。
まとめ
2025年4月納付分から、協会けんぽの健康保険料率が改定されています。
保険料率は都道府県ごとに毎年見直され、地域の医療費水準や加入者の年齢構成などを踏まえて決定されます。今回は、全国47都道府県のうち28道県で料率が引き上げられ、18都府県で引き下げられました。
特に佐賀県は全国最高の10.78%、沖縄県は最低の9.44%となっています。
40歳から64歳の方は、健康保険料に加えて介護保険料(2025年度は1.59%)も併せて負担する仕組みです。今回の改定は2025年3月分(4月納付分)から適用されますので、給与計算時には必ず最新の料率に更新し、適用月の切り替えにもご注意ください。
適正な社会保険料控除のため、当月控除・翌月控除のタイミング確認も重要です。