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事業承継11

【事業承継の実行】
[債務保証の整理]
経営する会社で融資を受ける場合、
経営者が保証人となって、その債務を保証することがよくあります。
この債務保証が事業承継では、
大きな障害となる場合があります。
後継者にとって、事業を引き継ぐ際に、
自らが個人で会社の借金を保証することに抵抗を感じるからです。
しかし、金融機関にとっては、事業承継では、
後継者の経験やノウハウが前経営者より乏しいことが少なくないため、
経営者保証の解除に対しては消極的であることが一般的です。
ただ、これではスムーズな事業承継が阻害されてしまいます。
そこで、今般その問題解消につながる動きがあります。
それは、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会が
設置した「経営者保証に関するガイドライン研究会」による
「経営者保証に関するガイドライン」の策定です。
このガイドラインでは、金融機関に対して、
事業承継時の現経営者との保証契約の解除、
あるいは後継者との保証契約の必要性について、
改めて検討することを求めています。
このガイドライン公表後は、
経営者からの保証解除の申し出に対して、
「解除に応じてもらった」割合はじつに46%に上るというデータもでています。
(株)東京商工リサーチ「経営者保証に関するガイドライン認知度アンケート報告書」(2016年2月)
また、以下のような事例も報告されています。
(事例1)
経営者の交替に際し、前経営者の保証を解除し、 新経営者から保証を求めなかった事例
業種:自動車用品卸売業
内容:事業用資産が全て法人所有であること、法人から役員への貸し付けがないこと、
   代表者が内部昇進での登用中心で、親族は取締役に就任しておらず、
   取締役会に監査役として顧問税理士が参加するなど一定の牽制機能が発揮されていること、
   法人単体の収益力により将来にわたって借入返済が可能なこと
   などから、法人と経営者との関係の区分・ 分離が図られていること等を勘案し、
   前経営者の保証を解除するとともに、新経営者に対しても新たな保証を求めないこととした。
(事例2)
事業承継に際し、前経営者の保証を解除した事例
業種:不動産賃貸業
内容:法人と経営者との関係の区分・分離が不十分ではあるが、
   これまでの返済状況や担保による債権の保全状況に全く問題がなかったことから、
   前経営者の実質的な経営権・支配権、既存債権の保全状況、法人の資産・収益力を勘案し、
   ガイドラインの 趣旨に則して、元社長の保証を解除することとした。
出典:金融庁「経営者保証に関するガイドライン」の活用に係る参考事例集
このように、債務保証については、
必ずしも後継者が引き継がなければならないものではなく、
金融機関へ相談することで、保証を解除できることがあります。
その際、ポイントとなることを、上記の事例に則してまとめると、
1.会社と経営者との関係の明確な区分・分離
2.財務基盤の強化
3.財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保
以上の3つに要約されます。参考にしてください。
■文責 井手昭仁
■免責
本記事の内容は、投稿時点での税法、会計基準会社法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
本記事に基づく情報により実務を行う場合、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上、実行して下さい。
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