仮想通貨元年と言われた平成29年、仮想通貨の価格の高騰が話題になりました。仮想通貨についての課税については、平成29年12月1日にFAQ形式で、国税庁から『仮想通貨に関する所得の計算方法等について』が公表されました。
そこで、その内容を以下にまとめてみました。
仮想通貨に対する課税
仮想通貨が課税されるのは、以下の「1.仮想通貨の売却」、「2.仮想通貨での商品の購入」「3.仮想通貨と仮想通貨の交換」により所得が生じた場合になります。したがって、保有している仮想通貨が、市場価格の高騰により含み益を生じていても課税されるわけではありません。
以下、「1.仮想通貨の売却」、「2.仮想通貨での商品の購入」「3.仮想通貨と仮想通貨の交換」の計算方法について、設例形式でご紹介します。
1.仮想通貨の売却
[設例]
3月9日、2,000,000円(支払手数料を含む)で4ビットコインを購入した。
5月20日、0.2ビットコイン(支払手数料を含む)を110,000円で売却した。
[解答]
売却した0.2ビットコインの取得価額は、2,000,000円÷4ビットコイン×0.2ビットコイン=100,000円
売価110,000ー取得価額100,000円=10,000円
2.仮想通貨での商品の購入
[設例]
3月9日、2,000,000円(支払手数料を含む)で4ビットコインを購入した。
9月28日、155,000円の商品購入に0.3ビットコイン(支払手数料を含む)を支払った。
[解答]
売却した0.2ビットコインの取得価額は、2,000,000円÷4ビットコイン×0.3ビットコイン=150,000円
商品対価155,000ー取得価額150,000円=5,000円
3.仮想通貨と仮想通貨の交換
[設例]
3月9日、2,000,000円(支払手数料を含む)で4ビットコインを購入した。
11月2日、他の仮想通貨購入(決済時点における他の仮想通貨の時価 600,000円)の決済に 1 ビットコイン(支払手数料を含む。)を使用した。
[解答]
交換に差し出した仮想通貨の取得価額は、2,000,000円÷4ビットコイン=500,000円
交換により取得した他の仮想通貨との差額は、600,000 - 500,000 = 100,000円
仮想通貨の取得価額
仮想通貨の取得価額については、国税庁の『仮想通貨に関する所得の計算方法等について』では、「移動平均法を用いるのが相当、ただし継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えない」と明示しています。
移動平均法とは、購入の都度、購入金額と残高の平均により単価を計算する方法で、
総平均法とは、繰越残高と今年1年間の購入金額の平均によって単価を計算する方法をいいます。
仮想通貨の分裂(分岐)
仮想通貨は、分裂(分岐)によって、新しい仮想通貨が誕生することもしばしばあります。その場合の所得の計算については、国税庁『仮想通貨に関する所得の計算方法等について』では、次のように示されています。
所得税法上は、経済的価値のあるものは、その取得時点の時価を基準に所得金額を計算します。
仮想通貨の分裂(分岐)については、その分裂(分岐)に伴い、新たに取得した仮想通貨は、
分裂(分岐)時点において取引相場が存在しておらず、当時点では価値を有していなかったと
考えられます。
したがって、その時点では所得は生じず、その新たに取得した仮想通貨を売却、使用した時点で所得が生じることになります。
なお、その場合の取得価額は0円となります。
仮想通貨に関する所得の区分
仮想通貨を使用することにより生じる損益は、原則として、「雑所得」に区分されます。
しかし、事業所得者が事業用資産としてビットコインを保有し、決済手段として使用している場合、その使用により生じた損益については、事業に付随して生じた所得と考えられ、事業所得となります。また、仮想通貨取引を事業として行われていると認められる場合にも、その所得区分は事業所得となります。
損失の取扱い
雑所得の金額の計算上生じた損失については、雑所得以外の所得と通算する事はできません。
所得税法上、他の所得と通算できる所得は、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得とされています。雑所得については、これらの所得に該当しませんので、その所得の金額の計算上生じた損失がある場合であっても、他の所得と通算することはできません。