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秋口に頻繁になる法人の税務調査の理由と概要

 例年夏場から秋口になると、税務調査が頻繁に行われます。

ここ2~3年はコロナ禍で実施される税務調査とあって、件数も減少傾向でした。

ところが今年度は、
コロナ禍での自粛も緩和され、以前と変わらぬ税務調査になってきています。

一般的には、税務調査と聞くとあまりいいイメージはないものですが、同時に経験がないとどんなものか、想像つきにくいのも事実です。

そこで、この記事では、

この記事の内容

  • なぜ、秋口に法人の税務調査が頻発するのか?
  • 税務調査とは具体的にはどんなものか?

について解説しました。

法人税の税務調査の事績など国税庁の報道発表についての記事はこちら

税務調査とは

税務調査とは、納税者の申告内容が正しいかどうか、国税庁が管轄する国税局や税務署によって行われる調査です。税務調査は税務署等の内部で行う机上調査と、納税者の元に訪問し行う実地調査がありますが、ここでは、実地調査について記載しています。

実地調査も大きく分けると「任意調査」と「強制調査」に分けられます。強制調査は国税局査察部が令状をもとに行われる調査で、巨額の脱税などが対象になります。

強制調査は、資料を押収して立件することを目的にしています。
そのため令状をとって行われ、警察などが行う捜査と同じようなものです。事前に連絡もなく、納税者側に拒否する権利はありません。

一方、任意調査は、納税者に連絡の上、同意のもと行われる税務調査です。

任意調査の種類

任意調査は一般的な税務調査で、主に所轄の税務署が行います。任意調査は「一般調査」、「現況調査」、「特別調査」、「反面調査」等があります。それぞれの違いは以下です。

一般調査

税務署から事前に日程等の連絡のうえ納税者の同意のもと行われる調査で、一般的に税務調査というと、この一般調査を指します。

現況調査

飲食店など現金商売の場合、調査当日に事前に連絡などなく、国税調査官が訪れて調査します。レジなどにある売上金を着服している実態を抑えるために事前連絡をせず、抜き打ちで行われるのが特徴です。

特別調査

一般調査では調査が不十分である場合や多額の不正が疑われる場合に、特別調査部門が行う調査で、事前通知もなく複数人の国税調査官のもと行われます。

 また、事業規模が大きい法人も特別調査部門が調査を行いますが、その場合は調査が特別調査部門というだけで、調査は一般調査と変わりません。

反面調査

反面調査は、調査される納税者の取引の相手方の実態を知るために、調査が行われます。相手方の税務調査の反証や、資料せんと呼ばれる税務署側が納税者に要請する取引の資料の裏付けをとるために行われることがあります。

秋口に税務調査が多い理由

 例年、秋口になると税務調査が多く実施されています。これは、税務署の事務年度が関係しています。

税務署の事務年度

税務署の事務年度は、7月から始まり翌年6月までが、「1事務年度」となります。

そのうえで、以下2つの時期を避けると、事務年度開始後、繁忙期前の年末までに余裕がある、8月から9月が一番最盛期を迎えます。

  • 確定申告期(1月~3月)
  • 事務年度末(4月~6月)

 

確定申告期(1月~3月)

税務行政は、12月の年末調整から2月3月の確定申告時期が繁忙期です。税務署も毎年、年明けから確定申告の対応で忙しくなります。そのため、この時期は税務調査の実施が難しくなります。

個人の所得税を担当する個人課税部門では、確定申告対応がありますが、法人の税務調査を担当する法人課税部門は、個人の確定申告についての応援等はあっても主要業務ではありません。 

ただ、税務調査に立ち会いをする税理士が繁忙期で対応困難なため、税理士会を通じて税務署に確定申告時期は法人調査も極力時期をずらすようなお願いがされており、税務署側もそれに忖度する形で、特別な場合を除き通常よりは頻度は控えぎみになります。

事務年度末(4月~6月)

確定申告が落ち着く4月になると、6月に事務年度が終了するため、2ヶ月で終わる調査でないと、その後の人事異動に支障をきたすため、本格的な税務調査は少ない傾向にあります。


【税務調査の流れ】

税務調査はどんな流れで行われるのか?任意の一般調査を例に、大まかな流れをまとめると以下のようになります。

  1. 連絡・事前通知
  2. 実地調査
  3. 税務署内での精査
  4. 申告是認・修正申告

連絡・事前通知

任意の一般調査の場合、事前に税務調査の日程について連絡があります。

税務申告を税理士に依頼すると、

通常、税理士は「税務代理権限証書」を添付して申告書を提出します。

税務代理権限証書があると、税理士に事前連絡があります。ない場合は納税者に直接連絡がいきます。

ちなみに、日程は国税調査官が提案した日時を厳守しなければいけないわけではなく、こちらの希望も当然聞いてくれます。そのうえで日程を調整します。

税務代理権限証書

実地調査

実地調査の際、調査官は1人の場合もあれば1人同行者が付いて2人となる場合もあります。

また、実地調査の最終日に、結果が出ることはなく、その時点で疑義がある項目を伝えて、一旦実地調査は終了します。

調査の場所
法人や個人の事業を行っている場合、一般的には事業所または代表者の自宅に国税調査官が訪れます。場所はこちらから指定できます。
調査日程
一般的な調査は、2日~3日程度で、初日の午前中に事業の内容や経理の状況(得意先からの入金、仕入れ・経費の支払の方法)、代表者の経歴などヒアリングがあり、初日の午後から調査が始まります。
調査の対象期間と内容
調査の対象期間は、通常、直近の3期分を見ることが多く、基本的には、請求書や領収書と会計上の帳簿を照合していく作業が主で、疑義があれば税務調査官は質問するので、それについて回答するといった流れで進みます。提示している証票類は、コピーをとられることもあります。
調査は、2日から3日と日をまたいで行われることが多く、その日の終了の時点で、調査官は途中経過的な報告をしてくれます。

 

税務署内での審議

実地調査の問題点などを税務署内で審議されます。概ね担当の国税調査官の上司である統括国税調査官に報告し、精査されるようです。

この時点で、確認や追加で資料の提出なども求められることが多く、通常税理士に問い合わせが来て、税理士経由で回答、資料の提出をすることが一般的です。

申告是認・修正申告

税務署内での精査が終わると税務調査の結果がでます。

一般的には結果は税理士に知らされることがほとんどです。何も修正すべき事項がない場合は「申告是認」で調査は終了します。問題がある場合、修正申告をします。

税務調査の対応

税務調査の対応について、以下2つの視点からまとめました。

  • 税務調査で準備するもの
  • 代表者・経理担当者の立会い

税務調査で準備するもの

 税務調査で準備するものは、

税務調査で準備する帳票類

現金出納帳、預金通帳、総勘定元帳、売上に係る請求書、仕入・経費にかかる請求書、納品書、領収書等、従業員の給与台帳・タイムカード・扶養控除申告書・源泉徴収簿等です。

また、取引先との契約書、不動産の賃貸借契約書なども提示を求められることがあるので準備が必要です。


ちなみにクレジットカードの明細書については注意が必要です。こちらの記事でくわしく解説しています。

代表者・経理担当者の立会い

納税者の立会いは、要所要所で、調査官の質問に対応できれば、調査の間中、傍らで常駐が必要ではありません。通常は調査官が作業をする間は、通常どおり社内の業務を行い、必要に応じて対応するのが一般的です。

法人の場合で、経理については経理担当者の方が経理状況に精通しているような場合、経理担当者が社内で対応すれば、代表者が常駐しておかなくても支障はきたしません。ただ、代表者へ確認することもしばしば想定されるので、1日の調査のうち一定時間は、立会いが必要です。

【まとめ】

 税務調査は例年夏から秋にかけて頻繁に行われ、今年度もコロナ禍の状況が落ち着いたことから増加傾向にあります。

 秋は税務署の事務年度の関係から、税務調査が多く実施されます。年末調整や確定申告時期が繁忙期であり、4月までに調査を終えないと人事異動に支障が出るため、8月から9月が最盛期です。

 税務調査は任意調査と強制調査に分けられ、目的や進行方法が異なります。強制調査は巨額の脱税などに対する調査で、令状をもとに行われ、拒否権はありません。任意調査は納税者の同意のもとで行われます。

税務調査は連絡・事前通知、実地調査、税務署内での精査、申告是認・修正申告のフェーズに分かれます。

税務調査は企業にとって重要なプロセスであり、正確な情報提供と協力が求められます。税務法規を遵守し、スムーズな調査を受けるための対策を講じることが重要です。

本記事の内容は、投稿時点での税法、会計基準会社法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
本記事に基づく情報により実務を行う場合、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上、実行して下さい。本情報の利用により損害が発生することがあっても、筆者及び当事務所は一切責任を負いかねますのでご了承下さい。

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