国税の納付については、税務署からの納付書の事前送付により、納付の確認をしている方も多くいらっしゃると思います。
ところが、令和6年5月より納付書の送付の見直しが行われています。
そこで、本記事では、納付書の事前送付の見直しの内容や、今後の納付の方法などについて解説しました。
デジタル化で税務行政が色々と変わる中の情報収集の一助となれば幸いです。
令和6年5月からの納付書の送付について
概要
国税庁は、キャッシュレス納付の利用拡大に向けて、令和6年5月以降、e-Taxで申告書を提出している法人などについて、納付書の事前送付を取りやめることとしました。
これは、社会全体の効率化と行政コスト抑制を目的としたものであり、納付書に代わる便利なキャッシュレス納付手段のご利用を推奨しています。
納付書の事前送付を行わない対象者
以下のいずれかに該当する方は、令和6年5月以降、納付書が事前に送付されなくなっています。
納付書の事前送付を行わない対象者
- e-Taxにより申告書を提出している法人の方
- e-Taxによる申告書の提出が義務化されている法人の方
- e-Taxで「予定納税額の通知書」の通知を希望された個人の方
- 以下のいずれかの方法で納付されている法人・個人の方
- ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)
- 振替納税
- インターネットバンキング等による納付
- クレジットカード納付
- スマホアプリ納付
- コンビニ納付(QRコード)
納付書が事前に送付されなくなる代わりに、国税庁では簡単・便利なキャッシュレス納付手段の利用を推奨しています。
キャッシュレス納付の種類
国税の納付で利用できるキャッシュレス納付は以下の5種類です。
- ダイレクト納付
- 振替納税
- インターネットバンキング
- クレジットカード納付
- スマホアプリ納付
以下、それぞれの特長や手続きについて解説します。
ダイレクト納付
ダイレクト納付とは、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用して申告書を提出した後、納税者ご自身の預貯金口座から、即時または指定した期日に口座引き落としで国税を電子納付する方法です。
事前準備
個人の場合: e-Taxの利用開始手続きをし、専用届出書をオンラインで提出可能。
法人の場合: e-Taxの利用開始手続後、納税地を管轄する税務署へ届出書を提出。
対応税目
ほぼ全ての税目に対応。ただし、一部送信データによって利用できない税目があります。
対応金融機関と利用額
利用可能な金融機関と口座、利用額は「利用可能金融機関一覧」で確認できます。
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/direct_kinyu.htm
利用可能時間
e-Taxの利用時間内で、金融機関のシステム稼働時間に限ります。
注意事項
手数料は無料です。なお、領収証書は発行されません。完了メッセージが表示され、e-Taxのメッセージボックスに通知が格納されます。
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/index.htm#a04
振替納税
振替納税とは、納税者の預貯金口座から自動引き落としで国税を納付する手続きです。利用するためには、e-Taxで依頼書を提出するか、税務署または金融機関へ専用の依頼書を提出する必要があります。
手続き方法
依頼書の提出には、スマートフォンやパソコンからe-Taxにログインして、振替依頼書を送信オンライン提出と振替依頼書を作成し、納税地を管轄する税務署または金融機関へ提出する書面提出があります。
対応税目
振替納税は以下の税金に対応しています。
申告所得税および復興特別所得税 | 確定申告分(延納分含む)および予定納税分 |
消費税および地方消費税(個人事業者) | 確定申告分および中間申告分 |
利用可能金融機関と制限
一部のインターネット専用銀行や支店では利用できない場合があります。利用可能金融機関一覧を事前に確認してください。
注意事項
手数料は無料ですが、領収証書は 発行されません。領収証書が必要な場合は、最寄りの金融機関の窓口で現金納付が必要です。
振替日は国税の納期限に基づきます。引き落としができなかった場合は延滞税がかかるので注意が必要です。
インターネットバンキング
インターネットバンキングやATMを利用して国税を電子納付する手続きです。事前に税務署でe-Tax(国税電子申告・納税システム)の利用開始手続を行う必要があります。
対応税目
全ての税目に対応していますが、納付方法により利用できない税目もあるため、詳細はe-Taxホームページで確認してください。
利用可能な金融機関と利用額
「ペイジーが使える金融機関」を確認してください。
https://www.pay-easy.jp/where/
利用可能時間
e-Taxの利用可能時間内、かつ金融機関のシステム稼働時間内で利用できます。
注意事項
手数料は基本的に無料ですが、インターネットバンキングやATM利用に手数料がかかる場合があります。また、収証書は発行されません。領収書が必要な場合は金融機関窓口で納付してください。
インターネットバンキングやATMから納付する方法については、e-Taxソフト操作マニュアル「電子納税を行う」を参照してください。
https://www.e-tax.nta.go.jp/manual/manual15.pdf
クレジットカード納付
https://www.nta.go.jp/taxes/出典:国税庁
クレジットカード納付は、トヨタファイナンス株式会社が運営する「国税クレジットカードお支払サイト」を通じて国税を支払う手続きです。
利用可能な税目
全ての税目に対応していますが、一部の税目(源泉所得税、印紙税、登録免許税など)はe-Taxから手続きが必要です。
利用可能額
1度の手続きで1,000万円未満、かつクレジットカードの決済可能額以下です。
対応クレジットカード
対応するクレジットカードはVisa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、TS CUBIC CARDです。
利用可能時間
24時間(メンテナンス時間を除く)利用可能です。e-Tax経由の場合はe-Taxの利用可能時間内となります。
注意事項
納付税額に応じた手数料がかかります。また、収証書は発行されません。領収書が必要な場合は金融機関窓口で納付してください。
なお、 手続完了後の取消しや納税の猶予はできません。納付後最大3週間は納税証明書に納付記録が反映されます。
スマホアプリ納付
スマホアプリ納付は、GMOペイメントゲートウェイ株式会社が運営する「国税スマートフォン決済専用サイト」で、納税者がPay払いを選択し、納付を委託する方法です。
利用可能な税目
全ての税目に対応していますが、印紙を貼り付けて納付する場合など、一部利用できない税目もあります。
利用条件
納付金額は30万円以下で、アカウント登録と事前チャージが必要です。
注意事項
決済手数料は不要です。また、収証書は発行されません。領収書が必要な場合は金融機関窓口で納付してください。
納付手続きの流れ
- 準備
確定申告書など納付税額がわかるものとスマートフォンを用意し、必要なPay払いアプリをインストールします。
- アクセス
スマートフォンから「国税スマートフォン決済専用サイト」にアクセスします。
- 手続き
サイトでPay払いを選択し、納付手続きを行います。
今後の納付書での納付
納付書が送られないからといって、納付書で納付ができなくなるわけではありません。
納付書での納付を希望する場合
e-taxを利用していない場合や源泉所得税や消費税納付書については、今後も送付される予定です。
e-Taxを利用していない方への納付書送付
現在、e-Taxを利用せず、税務署から送付された納付書で納付している方については、今後も引き続き納付書を送られる予定です。つまり、納付書が必要な方にはこれまで通り納付書が届きます。
源泉所得税や消費税の納付書について
源泉所得税の徴収高計算書や消費税の中間申告書兼納付書についても、今後も送付されます。ただ、国税庁としては、電子申告やキャッシュレス納付の利用を強く推進しています。便利で効率的なので、この機会に検討するのもよいかもしれません。
納付書利用の注意点
納付書を使って納付する際には、必ず税務署が用意した所定の納付書を使いましょう。
コピーした納付書や会計ソフトで作成した納付書を市販の用紙に印刷して使うと、機械が正確に情報を読み取れない場合があります。その結果、納付の確認に時間がかかり、手続きが遅れる可能性があります。
もし納付書が必要な場合は、最寄りの税務署にお問い合わせください。
まとめ
令和6年5月から、国税庁はキャッシュレス納付の普及を目的として、e-Taxで申告書を提出している法人などに対して納付書の事前送付を中止します。
対象となるのは、e-Taxで申告する法人や、e-Taxによる申告が義務化されている法人、またはe-Taxで「予定納税額の通知書」の通知を希望した個人などです。これにより、社会全体の効率化と行政コストの抑制が期待されています。
キャッシュレス納付手段には以下の5種類があり、それぞれの手続きや特徴についても理解しておくことが重要です。
- ダイレクト納付
- e-Taxを利用し、納税者の預貯金口座から即時または指定日に引き落としで国税を納付する方法。事前にe-Taxの利用開始手続きと専用届出書の提出が必要です。
- 振替納税
- 納税者の預貯金口座から自動引き落としで国税を納付する方法。利用にはe-Taxで依頼書を提出するか、税務署または金融機関へ専用依頼書を提出する必要があります。
- インターネットバンキング
- インターネットバンキングやATMを利用して国税を電子納付する方法。e-Taxの利用開始手続きが必要です。
- クレジットカード納付
- トヨタファイナンス株式会社が運営する専用サイトを通じて国税をクレジットカードで納付する方法。手数料がかかりますが、24時間利用可能です。
- スマホアプリ納付
- GMOペイメントゲートウェイ株式会社が運営する専用サイトで、納税者がPay払いを選択し納付を委託する方法。納付金額は30万円以下で、事前にアカウント登録とチャージが必要です。
これらのキャッシュレス納付手段は、便利で効率的な方法として推奨されています。
納付書が必要な方には従来通り送付されます。
納付書での納付を希望する場合は、税務署から送付された所定の納付書を使用し、コピーや市販の用紙を避けるよう注意が必要です。
本記事の内容は、投稿時点での税法、会計基準会社法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
本記事に基づく情報により実務を行う場合、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上、実行して下さい。本情報の利用により損害が発生することがあっても、筆者及び当事務所は一切責任を負いかねますのでご了承下さい。