2024年4月1日から不動産の相続登記が義務化されました。
これにより、不動産の相続があった場合、相続開始後3年以内に登記しなければ過料が課せられます。
相続登記は、亡くなった方の不動産の名義を相続人に移す手続きですが、放置すると大きなデメリットが生じます。
登記簿の名義が変更されていないと、不動産の正式な所有者と認められず、不動産の売買取引に支障をきたす他、相続人間の争いを招く可能性もあります。
一方、相続登記を適正に行えば、不動産の所有権が明確になり、売買や担保設定が可能になる他、災害時の対応もスムーズになります。
このように、従来より不動産の相続登記は大事なものですが、義務化により、一層重要度が増しています。
相続登記の義務化のポイント
相続登記とは?
相続登記とは、亡くなった方の不動産(土地や建物)の名義を相続人に移す手続きです。民法では、相続が発生すると、被相続人の財産は相続人に自動的に承継されますが、登記簿の名義を変更しなければ、正式な所有者とは認められません。
相続登記は所有者不明土地問題への対策として義務化され、申請期限は3年以内で、期限を過ぎると過料が課せられます。
義務化の背景
相続登記が義務化された背景には、所有者不明土地の増加という問題があります。相続登記が放置されると、誰が所有者なのか分からなくなり、土地の売買や処分が困難になるだけでなく、災害時の復興や公共事業の妨げにもなります。
国土交通省の調査によると、令和4年時点における全国の所有者不明土地の割合は24%に達しており、深刻な社会問題となっています。
申請期限
相続登記の申請期限は、相続開始を知った日から3年以内です。
相続開始とは、被相続人が亡くなった日です。
過料
申請期限を過ぎた場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。過料は、法務局から通知され、それでも納付しない場合は、裁判所から督促状が送付されます。
過去の相続も対象
2024年4月1日から施行された相続登記義務化では、2024年4月1日以前に発生した相続についても、今回の義務化の対象となります。
過去の相続であっても、申請期限は3年以内です。
相続登記の必要性
相続登記は不動産の所有者を明確にし、トラブルを防ぎ、取引や災害時の対応をスムーズにできます。
所有権の明確化
相続登記を行うことで、不動産の所有者が明確になり、以下のメリットがあります。
- 土地の売買や担保設定が可能になる
- 相続財産の管理が容易になる
- 災害時の被災証明の取得がスムーズになる
- 所有者不明土地問題の解消に貢献できる
➀ 土地の売買や担保設定が可能になる
相続登記を行うことで、所有者が明確になります。例えば、相続人が不動産を売却する際、登記簿上の所有者が確認されるため、買い手との契約や金融機関との融資手続きがスムーズに進みます。
相続した土地を売却する際、相続登記を済ませていれば、買い手は土地の所有者が明確であることを確認でき、安心して契約を進めることができます。
② 相続財産の管理が容易になる
相続登記により、相続財産が明確になります。
例えば、賃貸している家屋や土地の所有者に相続が発生した場合、相続登記を行い、登記簿上の所有者が相続人となることで、家賃収入の管理や税金の支払いがスムーズに行えます。
③ 災害時の被災証明の取得がスムーズになる
相続登記をしておくことで、災害時に被災証明を取得しやすくなります。
例えば、相続登記をしていれば、被災した不動産の所有者が明確になるため、保険会社や行政機関からの対応がスムーズになり、保険金の支払いや復旧作業の手続きが迅速に進みます。
④ 所有者不明土地問題の解消に貢献できる
相続登記を行うことで、所有者不明土地問題の解消に貢献します。
例えば、相続登記をしていれば、土地の所有者が明確になるため、行政機関が適切な処置を行い、問題の解決に向けた取り組みが進みます。
トラブル防止
相続登記を怠ると、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 相続人間の争いが起こる
- 不動産の売却や賃貸が困難になる
相続人間の争いが起こる
相続登記を怠ると、不動産の所有権が明確にならず、相続人間での争いが起こる可能性があります。
例えば、相続人が複数いる場合、誰が不動産の所有者なのかが明確でないと、遺産分割や運用に関する意見の不一致が生じ、法廷闘争にまで発展することがあります。
不動産の売却や賃貸が困難になる
相続登記を行わないと、不動産の所有者が不明確なままとなり、売却や賃貸などの取引が困難になります。
例えば、不動産を売却しようとする場合、買い手が安心して購入するためには所有権が明確であることが必要ですが、相続登記がないと買い手が不安を感じ、取引が成立しないことがあります。
相続登記の手続き
相続登記は、亡くなった方の不動産の名義を相続人に移すための手続きです。2024年4月1日からは義務化され、より多くの方が手続きを行うことが求められています。
相続登記は、主に以下の6つのステップで行われます。
必要書類の収集
まず、相続登記に必要な書類を収集します。主な書類は以下の通りです。
*以下は、法定相続分の相続の場合です。遺産分割協議の場合、別に遺産分割協議書が必要です。
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の除籍謄本
- 被相続人の改製原戸籍
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の住民票
- 固定資産税課税明細書
これらの書類は、市区町村で取得できます。相続人全員の書類が必要となりますので、漏れがないように注意しましょう。
法務局への調査
次に、法務局で不動産登記簿謄本を確認します。登記簿謄本には、不動産の所有者や抵当権などの情報が記載されています。登記簿謄本を確認することで、相続登記に必要な情報を収集することができます。
相続関係図の作成
相続関係図は、被相続人と相続人の関係を図表化したものです。相続関係図を作成することで、相続人の範囲や法定相続分を確認することができます。
登記申請書の作成
登記申請書は、相続登記に必要な情報を記載した書類です。登記申請書には、被相続人や相続人の情報、不動産の情報、遺産分割協議書の内容などを記載する必要があります。
法務局への申請
必要な書類をすべて揃えたら、法務局に相続登記を申請します。申請には、本人確認書類や手数料が必要です。
登記完了
法務局で審査が行われ、問題がなければ登記が完了します。登記が完了すると、新しい登記簿謄本が発行されます。
まとめ
相続登記は所有者不明土地問題への対策として義務化され、申請期限は3年以内で、期限を過ぎると過料が課せられます。
相続登記を怠ると、相続人間の争いや不動産取引の困難の可能性が生じます。
一方で、相続登記を行うことで不動産の所有権が明確になり、売買や担保設定が可能になります。
また、災害時の対応もスムーズになり、所有者不明土地問題の解消にも貢献します。
手続きは、必要書類の収集から登記完了までの6つのステップで行われ、司法書士に依頼するのが一般的です。
2024年4月1日からは義務化され、より多くの方が手続きを行うことが求められます。
本記事の内容は、投稿時点での税法、会計基準会社法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
本記事に基づく情報により実務を行う場合、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上、実行して下さい。本情報の利用により損害が発生することがあっても、筆者及び当事務所は一切責任を負いかねますのでご了承下さい。