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会社経営者の会社への貸付金の相続税への影響

会社経営者の方は経験あると思いますが、
資金繰りに窮した場合、個人のお金を会社に提供するのはよくあることです。
そして、資金に余裕があれば会社から返済してもらいますが、
資金に余裕がなければ返すことなくそのままというのが実情です。
会社の決算書上は代表者からの借入金として計上されており、
返済しないからといって、法人税法上は何のリスクもありません。
利息を計上しなければ、所得税を課税されることもありませんので、
そのままになっているというのはよくあることです。

しかし、会社に貸したお金は、会社に対する貸付金ですので、
会社経営者が死亡した場合、この貸付金は相続財産となります。

会社の資金に余裕がなければ回収できない、まさに「絵に描いた餅」の状態ですが、
相続税法上の評価は貸した時の価額が評価額となりますので、
相続税が課税される場合には、この貸付金もその貸した時の金額のまま相続財産として課税されることになります。。

相続が発生して慌てないために事前に対策を打つことが賢明です。

その方法は、贈与の非課税枠を使うのが一般的です。
贈与税は、受贈者につき年間110万円までは課税されません。
(相続時精算課税を選択していない暦年課税の場合)
ですから、相続人となる人に一人当たり年間110万円を贈与し財産を移譲します。
これは時間を味方につけて、無税で相続税を節税する方法です。

しかし、ここで注意しなければいけないのは、
その贈与が「連年贈与」となる場合です。

連年贈与というのは、
「1,000万円を毎年100万円ずつ10年に分けて贈与する」
といったような贈与契約のことをいいます。

 

国税庁HP

No.4402 贈与税がかかる場合
Q1 親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A1 各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。

ですから
「毎年100万円の贈与契約を交わした贈与を10年続けて結果として1,000万円になる」場合は、
連年贈与とはなりません。

一見変わらないように見えますが、
連年贈与となるには、最初の贈与契約の時に総額の1,000万円が確定している必要があります。
「毎年100万円の贈与契約を交わした贈与を10年続けて結果として1,000万円になる」場合は、
1年目の100万円の贈与があった時点で2年目の100万円の贈与があるかどうかはわかりません。
あくまで結果であるという点で連年贈与とは違います。

 

では、連年贈与と言われないために実務上どうすべきか?
ポイントをまとめると次のようになります。

・適正な贈与契約書を作成する。
・贈与を銀行振り込みなどの方法により、しっかりとした履歴を残す。
・受贈者の通帳、印鑑の管理は必ず受贈者本人が管理する。

 

■文責 井手昭仁

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本記事の内容は、投稿時点での税法、会計基準会社法その他の法令に基づき記載しています。
また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
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