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海外不動産を使った節税の可否

日本では不動産と言えば、新築と中古では価格に開きが大きく、
耐用年数を全部経過した建物はほとんど価値がないと思われています。
中古で土地付き建物を買う場合などは、建物価格は二束三文で、
売買代金がほぼ土地の金額で構成されることも少なくありません。

しかし、海外ではそうではなく、中古だからと言って値が大きく下がることもなく、
土地付き建物で、建物価格が半分以上を占めることも珍しくありません。

これを使った節税スキームが物議を醸しています。
概要は、例えば海外不動産の土地建物で1億円
(うち建物価格6千万円、木造、築25年以上)
の物件を購入し、賃貸します。

減価償却費は、木造建物の法定耐用年数は22年で、
その全部を経過していますから、
法定耐用年数×20% =4年(1年未満の端数切捨て)となります。
これを定額法で償却すると、年間の減価償却費は1,500万円となり、
大幅な赤字を計上できます。
この赤字を給与所得などと通算して、所得税を減額することが可能になります。

また、こういった海外不動産は、
大幅に価格が下がることはないため、高額で売却することができます。
売却時に5年を経過していれば、譲渡所得の税率は、
所得税(復興税含む)15.315%に住民税 5%で
合わせて20.315%ですから、税負担もそれほど大きくありません。

しかし、これが会計検査院の検査で問題になりました。
以下は、平成28年11月14日「税のしるべ」(一般社団法人大蔵財務協会)
の記事です。
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〈会計検査院が国外の中古不動産を利用した節税策を指摘〉

会計検査院は7日、平成27年度の決算検査報告を取りまとめた。
報告では、富裕層の一部が国外にある中古不動産を利用して行っている
節税策の実態を明らかにしており、現状の問題点を指摘した上で、
財務省に対して国外に所在する中古の建物に係る減価償却費のあり方を検討するよう求めた。

http://shirube.zaikyo.or.jp/article/2016/11/14/35911.html
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過去にも
・賃貸マンションの自販機設置による消費税還付スキーム
(平成22年税制改正)
・仮決算をした法人への過大な還付加算金
(平成23年税制改正)
などのように
会計検査院の指摘事項は、税制改正に反映されていることから、
今回の事案も近い将来、税制改正に盛り込まれることが予想されます。

■文責 井手昭仁

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